残暑…と言うよりも、もはや単に暑いのではないか…?
と、思うほどまでに暑い時期。
夏休みの課題が一通り提出し終わり、本格的な授業再開が始まった時期。
我が学校では、それを妨害するようなイベント―――文化祭―――が行われている。

この文化祭は二日構成であり、初日(昨日の事になる)はクラスの出し物など、
体育館を使っての行事があり、二日目(今日の事になる)は模擬店など、
駐輪場・教室・中庭を使った事をしている。
二日目の今日は、学校外の人達も招き入れて、中々盛大に行われている。

さて、そして俺のクラスである一年三組は、先日は演劇

(俺にとって、あれほど屈辱的だった事は無い…いや、断言はできないが)をし、
今日は、視聴覚教室でお化け屋敷なだという実に

…いやはや実に面白くない事(格好も)をしている(俺にとって、これほど屈jy)。

俺の役割は化け猫という妖怪なのだが、
里居も同じ役割で、いそいそと歩いている奴を左右からグワァ、と。
二人で襲いかかる役なのだ。
うむ、恐ろしい。
何が恐ろしいのか…それは、
うゎ、ちょ、話、お…おそr

「グワァ」


「キシャ―――!!!

「……ごめん。」

しまった。
どうやら友人を脅かしてしまったらしい。
…ごめんって何さ?
ついでに言うと、俺がやる気のない方で里居がやる気のある方。

?そうそう。
俺が「キシャ―――!!!」の方



って違うっからっ!!

そう、恐ろしい話だ。
煙用のドライアイスを調達してきた友人が裏方へ回るんだ。

って違うぅっ!

そう、つまりだ。
人が来て、さらに次の人が来るまでの間。
この間、俺たちは待機しているんだが、
人の左右から襲いかかる俺たちは、必然的に向い合わせになる。
そうなると、目を合わせる事になる。
そうだ。

目を合わせたら最後。
里居は全く視線を変えない。
瞬きすらしない人間と目を合わせている状態が何分も続くと、
そろそろ精神状態が危なくなってくる。
もはや、ネコミミ・シッポなどの屈辱的な事は小さい事だ。

…などと思ってみても、その厳しさが安らぐ事は無い。
時折、あいつの眼が光るんだが、何だろうか…アレ。

と、また一人…いや二人。
標的がやってきた。

ゆっくりとビビリながらだろうか…?
慎重に歩く奴が一人。

全く物怖じする事無く、
普段通り(その人の普段を見ていないが、恐らくそうだろう。)の奴が一人。

里居の視線がようやく外れる…とほぼ同時に俺たちは飛び掛かった。

「ニャァ」


「グワッシャィ―――!!

いや、後者はもはや猫じゃないだろっ!
俺も妖怪じゃないけど…と一瞬で悟る俺。

「…」


「ウォァァァッ」

そこには、何だコイツら?
という目で見る青髪の男と、

人生で初めて黒ひげ危機一髪をやった様に驚いている金髪の男がいた。

「「……」」

俺たちは、もはや役目は果たした。
と言わんばかりに待機場所に戻る。

青髪と金髪の男たちは、

「オ…我があ、ああのような児戯で驚くわ、わわ、わけが無かろう!
「ああ、そうかい。」

などの会話をしながら、奥へと進んでいった(青髪が金髪を引きずってた)。

…あの二人どこかで見たような気が…いや、よそう。


―――
略(この後に繰り広げられた恥辱と、危険、

更には金色のゴージャス王の降臨・失脚・暴走、

そしてお化け屋敷セットの崩壊などの話は割愛させていただきます。)―――


打ち上げもそこそこに終了し、俺は里居と共に

(否、ただ単に帰宅する方向と速度がほぼ一致しているだけなのだが)帰路についている。
うむ、真横から強烈な視線を感じる。

何と言うか、「歪れ」とでも言われたら、本当になってしまいそうな程に強烈な視線だ。
…ハヤクカエリタイ。
と、速度を上げると、里居も上げる。
走ると、里居も走る。

無論、こちらに強烈な視線を浴びせたまま。

…そろそろ逆走しようかと思った時、ちょうど俺の家の前に着く。
うむ、これでこの苦痛から解放される。

そして背後から、

「お疲れ様」

と、声が聞こえてきた。
俺は、一瞬だけ空耳かと疑い、
次の一瞬で後ろを向いた。

すると、そこには…



「血だらけの女がぁぁぁ」

「ヒィィィィッ!!

って、完全に心を読みとって、尚且つ悪用するなっ!
と、怒ろうとした時には、里居は既に駆けだしていた。


…何と言うか、里居から日常会話以外の事を話されたのは、
夏休み以来になると思うんだ…。

俺は、先程の事態で倒れた体を起こすと、
門を閉め、家の玄関へと入っていった。

 

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