ポタポタ、からザーザー、という音に進化した雨には、
てるてる坊主というティッシュペーパーの塊は効かないのか。
今日も梅雨前線の影響大。
不快指数も鰻の滝登りだ…意味不明か…。

とはいえ、この雨が降らなかった故に、

深刻な水不足となる場合が、ここ数年では割と頻繁に起こっている。
いやはや、これも夏を快適に過ごすのための試練か…。
と思いながら、下敷きを扇ぎブラウスの中に風を送り込む。
この学校の制服は、いわゆるブレザーというやつで、
春・秋・冬はネクタイ着用なのだが、夏になるとさすがに上はブラウスのみで
良しという事になっている。

中には、ズボンからブラウスをだしていたりする奴もいるが、
仮に、俺がそんな事をすると指導という名のリンチが待っているので、
行動には絶対に起こさない。

他にも、シャツを着ていれば、

この不快さが多少はマシになるという事が分かって無い奴もいる。
ブラウスだけでは吸汗性が殆ど無い。
それでは、汗を出して熱を下げる。
という方法が出来ないじゃないか…
そこらへんを理解できる脳があるのか無いのか…
結局は他人事だが。

つまり、こんな思考をして気を紛らわさないといけないぐらいに、
不快なのだ。

更に、今日は魔の木曜日なのだ。
木曜日…現在の俺にとって今日ほど厭な日は無い。
授業では体育が無く、部活はしっかり行われ、バイトもきっちり三時間半。
とは思っていても、所詮は作り話。

俺が一言も話さない内に、授業は終了。
いつも通り、三人で部室に行く。
否、三人で…。
という訳ではなく、厳密には俺と友人が共に行き、
もう一人は偶々同じタイミングで部室に向かっているだけだ。
とはいえ、その全員が同じクラスで、教室で時間を潰す事も無く、
掃除当番でも無かったら、そりゃあ同じになるだろう。

俺は、<帰宅部(はぁと)部室>
(はぁと、と書かれている所がミソだ。)と書かれているドアを開ける為にノブを回す、と。
それがスイッチになり、何かが外れる様な手ごたえ、音がした。
俺は、このまま扉を開けないという選択肢を破棄し、

(扉を貫く物体であった場合、このままでは躱せない為、)友人に心の中で謝罪し、
扉を開け、友人を無理やりに中へと押し入れた。

刹那、何か…鋭利なモノが人の腕に刺さったような音。(あんまり音はしないが、)
そして、

「ちょ、痺れ…シビッ…シビッ……レッ…?

という友人の声。
ドスッ、と。友人が倒れる音。
そして、

「「…失敗か。」」

と、心底悔しげに唇をかむ先輩達の姿(2人ほど)があった。


帰宅部―――それは、ほぼ全ての学校に存在する架空の部活なのだが、
この高校(というより先輩たち)は、その架空の部活をあろう事か、
設立させてしまいやがってくれたのだ。(意味不明)

活動目標:特に無し、強いて言えば遊ぶ。 正しく帰宅する。

というふざけた部活が認められたのか、それとも強制的に認めさせたのかは、
俺の知る所では無い、寧ろ、知らないでおきたい事だが、
何処で間違えて入ってしまったのかが知りたい。

バイト先が決まらなくて困っていた時に、
奇跡的に見つかったバイト先の店長の子供(双子)が、帰宅部の部長と副部長。
だったからか…?
うん、つまり、バイト先を決める時に間違っていたんだね…俺。

否、入部を拒否する選択肢もあった。
ただし、それには俺が今まで築いてきた人間関係やプライドを、
全て壊さなければいけない様な選択肢だったのだ。

そう、不運だったんだ…
ただ、それだけだと思いたい。

運命なんてある訳ないのさ…アハハ。

俺は、友人の屍(へんじがない。ただのしかばねのようだ。)を跨ぐと、
先輩たちへ挨拶を一つし、椅子に座る。
と、

「「暑いね〜、ジメジメだね〜。」」
と、二重音声(但しどちらも同じ台詞。)が聞こえてきた。

この二重音声はセミよりも煩く、蚊よりも耳障りなので、
俺は無視を決め込んでいると、里居が言葉を合わせる。
そういや、あいつがいつも被害を蒙っていない気がするのは、
気のせいじゃないと思う。
先程の罠(飛んできたのはダーツの矢だった。)も、

今までの罠(主に俺を狙って友人に被害が加わる)も、

全く被害を受けていないぞ、あいつ。

そのあいつ―――里居と俺はいわゆる幼馴染という間柄だ。
子供の頃は、姉妹…否!
姉弟のように遊んでいたし、互いの家に泊まった事もある。
しかし、そのままの間柄で、
朝、起床すると起こしてくれたりする…などという話は無く、
中学に入った頃あたりからは、会話をした記憶すら無い。

それは、同じクラス・同じ部活(帰宅部(はぁと))に入ってからも、
まぁぁったくもって変わっていない。
里居は俺と目が合っても、話しかけないし、

(ずっと見られていて、向こうから目を逸らしてくれないが)
俺も里居と目が合っても、話しかけない。

但し、必要な時になれば、必要最小限の会話ぐらいはするだろう…多分。
うん、俺はこれで良いと思ってるし、あっちもきっとそうだ。

なら、気にする事は無い。
残りの文字数も少ない。
来月になれば、父が一日だけの帰宅(帰国でも可)をするし、
ほら、未来は…真っ暗か。
はぁ…奴が帰ってきても…なぁ?

と、少し落ち込みながら、
俺は顔を横に向け、既に止んだ雨が、窓に残したモノを見た。

 

 

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