――麻雀とは、基本的に自分が上がるよりも振り込まない方が肝要だと思っていた。
故に、某サッカー代表のようにリスク管理をする……のが大事なの、だが。
「おっと……ツモ、親満で四千オールな」
「……」
「………」
「――――」
これで、また蘭の連荘。
「これで、次また和了ったら八連荘で役満だよな?」
「――八連荘はローカルルールだよ?」
「そ、そうだよねー、八連荘はローカルだから無しだよ……」
アハハハハ……アタシと巨乳で曖昧に笑う。
アタシは麻雀における流れをあまり考慮しないが、
蘭はどう見てもノリに乗ってて海苔弁だ。
なんせ――七巡までには、ほぼ確実にテンパり、ツモ和了っている。
もう、鬼かと、悪魔かと……。
「お、ツモだ。リーチ、ツモ、平和、清一、ドラは……なし。
えーと、親の倍満で八千……終了だな?」
これで、蘭以外の全員がアウト。
つーか、凄い強運だな……流石はアタシの嫁。
「ええい、やってられん!!
てめぇ、蘭!! サマったんじゃねぇのか!?」
「こっち来んな、鬱陶しいんだよ、お前のデカさは!!」
ガバリ、と飛びかかってきた柳野とコタツから出つつ、
転げまわって絡み合う、藍原蘭。
「………」
「――てりゃ」
「きゃい――――!! 何でこっちに来んのさッ!」
それを見て、頬を赤らめていた先輩がいたので、
アタシも飛びかかることにした。
――そうして、ファ●カタ、大富豪をしている内に夜が明け、
肌寒いのを感じながら、みんなで初詣へ向かった。
「うわ、沢山いるね……」
「――ここら辺にいる人は、ほとんどここに来るから」
なんて、暇人たちを傍観しながら、先輩と密着する。
「――――」
「………」
「「どしたん、男二人で黙りこくってさ」」
「じゃあ、言うが――――何で、お前らは巫女?」
「「可愛いでしょ〜♪ バイト代も入るし、うちの店も休みだし。」」
蘭は頭痛を堪えるように額に手をやりながら返答する。
「――蘭、巫女装束が好きなのかな?」
「え? 藍原クンってそんな趣味が……?」
と、そこでデキブツがこっそりとアタシ達に耳打ちをしてきた、その時。
「いやー、蘭はむしろ年上の――――ッ!?」
「――の? 何だ? お前、何を言うつもりなんだ……? あぁ!?」
デカブツの口を塞ぎ、ギリギリと力を込める少年がいた。
しかし、年上好きとはヤバい趣味だ。何がヤバいって、アタシが範囲外になるとことか。
まあ、蘭がどんな趣味をしていようと、いざとなれば監禁して……フフフ。
「おい、里居……大丈夫か?」
「いや……その、美恵ちゃん? よだれ、垂れてるよ?」
「――――む」
「って、きゃい――――!? 何でつけてくるのさ!?」
「「うわ、美恵ちんも沙梨も不潔だ不潔〜。このヨダレ女ども!!」」
「おい、そこの人害。鬱陶しいから暴れんな」
「「何だとテメェ――――。日本人の癖に正月でテンションが上がらんのか!?」」
けしからん、なんて叫びながら蘭に掴みかかるステレオ姉妹。
「よしきた、いけ下僕」
「って、蘭。お前、何で俺を盾にしてんだ――――アァァ!?」
ひょいと前に立たせた柳野は、車に撥ねられた動物のように吹き飛んでいく。
「で、此処って何の神様を祀ってるの?」
「「知らね〜、沙梨が調べてよ。レポートにして明後日に提出ね」」
「いやいや、何でさ!?」
まあ、アタシもこの神社については名前くらいしか知らないが……
「――蘭、何か知ってる?」
「そこに書いてあるぞ? えっと……天御柱命と国御柱命だってさ」
「――――もう一回」
「アメノミハシハラノミコト、クニノミハシハラノミコト」
「――――あと三回」
「アメノミハシハラノミコト、クニノミハシャリッ!?!?」
「――――――」
「…………」
「さて、お御籤引いて帰るか」
「――そうだね」
そう言い、四人揃って歩き始める……そんな新年だった。