「……寒い」
蘭の独り言に、頷きながら言葉を返す。
「あぁ、寒いよな、今日は」
こんな寒い日では、いつもの様にハシャグ元気がでない。
雪なんて降るのは一年に数回。積もるとなれば数年に一回。
そんなこの町に、雪が大量に積もっている。
「――そんなに暑い?」
……まあ、里居の一言は気にしないでおこう。
そんな事より、ポケットのカイロが冷えてきたことの方が重大だ。
「………」
「……」
数秒、部室が静まりかえる。
あー、こういう雰囲気ってあるよな? 少し、笑ってしまいそうになるほどの静寂。
そして、それに耐えきれなくなったのか……
「帰る」
蘭は立ち上がって外へ出ようと、扉に手をかけるが――
そこに、妨害者が現れた。
「「フフフ……今日の部活は“雪ロイヤル! 〜戦わなければ、生き残れない!〜”だよん」」
そうか……うん、まあこいつらならそんな事すると思ったよ。
まあ、ネーミングセンスが壊滅的だから――
「いゃ、名前が長いだろっ!」
と、律儀にツッコんだところ、視界を雪玉が覆った。
え? 何? 俺、生き残れない……?
――――そして、意識が暗転する―――
――ヴヴヴ、と携帯のバイブ音がする。
あぁ、そういえばまだ学校だったっけ?
教師による後頭部叩きを感じながら、俺は夢の世界から帰還した。
「って、あれ? ここ、部室――――って、ヘックショィ!!」
サムッ………サムッ!!
あの姉妹、俺が昏倒した後、放っていきやがったな。
絶対に風邪ひいた――――って、何だ?
ドカドカ、と後頭部を連続的に襲っている鈍痛。
「痛いわ、ボケェ!!!!」
「「あぁぁぁぁぁぁ!?!?」」
「って、ごめんなさ――――――いッッ、どぅくしっ!!」
振り返ると、姉妹が蹴りを入れていた。
……その下着の色を確認したと同時に、俺の意識は暗転する――――
「――――って、待てよオイ!! 雪合戦から一日経ってんじゃねぇか!!」
ハッ、として携帯を見ると自宅からの電話。
……まあ、連絡も無しに無帰宅だもんね。でも、悪いのは俺じゃない。
というか、今日も帰れないかもしれまえん、ごめんなさい。
「「お前が寝過ぎなんだよ、タコ!!」」
「うっせぇ、水色とピンク!! あ、蘭は黒が好きだぞ?
まあ、下着の色も黒が好きとは知らないが―――――アァァァァッ!!!」
――そうして、今度こそ俺の意識は闇に堕ちた――