「みなさん、御入学おめでとうございます。
我が校は設立40周年という節目をむかえ、」
などと、聞きたくも無い話を延々と聞かされる行事は、
さすがにこれまでの人生(15年と11ヶ月)で
耐性が付いても良いくらいに聞かされてきただろう。
しかし、何回経験しても全く楽にならない。
これは、推理漫画などで死体を見ると、いつも悲鳴をあげる人と同じなのか…?
…まあ、遠くはなさそうだが、近くもなさそうだ。
校長の話は続く。
「みなさんの胸は、これから起こる出来事への不安と期待で一杯でしょう。」
……そんなのは、みじんにも無い!
と、律儀にツッコムのが唯一の暇潰しになるぐらいか…?
しょうがない、ここは省略機能を使うか。
省略機能とは、どうにも会話が進展しなさそうな時に起こる、時間の早送り機能である。
「で、あるから。
今の時代において、君達に託された課題は多いのですが、その分―――」
おい!
早く省略してくれよ!
政治や経済の話になってきてるだろっ!
「私が小さい頃は、この辺りにも田畑があったのですが、
近年における都市開発で現在は―――」
…はあ、ついに、昔話まできたか。
―――略―――
「おい、どうしたんだよ。
二日酔いみたいになってるぞ?」
俺を心配してくれてるのか、
はたまた何かあちらに得るものがあるのか、友人が声をかけてくる。
しかし、この善良一般少年が酒を飲むかと思ってるんだろうか。
まあ、今の時代において、一般的な少年が酒を飲まないかと言うと(略)。
という訳なのだが、生まれてこの方信号無視すらした事が無い俺には(略)
「ああ、省略機能が壊れててな・・・」
って、肝心な所を略するなよ!
うゎ、ぉま、なにし(略)
「?……まあ、お前がそんな奴なんて事は知ってるけど」
…どんな奴だと思ってるんだよ!?
しかし、高校一年になり、校内の知り合いが減った中で、この友人と同じクラスになった事は幸運だろう。
「で、一緒の部活入らないか?
今週はずっと部活を見て回ってさ―――」
しかし、同じ中学の奴が全員同じクラスになったのは作為的なモノを感じる。
まあ、同じ中学で受けたのは俺を含め三人だけなんだが・・・
「話を聞け!」
「あ、うぅん?」
む、どうやら友人の話を無視していたらしい。
いかん、いかん。
「えっと…何を言ってたんだ?」
「ああ、とりあえず今日から学校内の部活を見て回って(略)。」
友人の話は、部活をして少年らしく青春を満喫しよう。
という、ものだった。
俺はそれをパスする。
理由は至極簡単なモノで、高校に入ったらバイトをしようと思っていたからだ。
両方出来るほどに器用じゃないのですじゃ。・・・・・じゃ?
俺は尚も食らいつく友人を無視(とは言っても微妙に聞いている)し、
ちらり、と。
斜め前の席に座っている人を見た。
そうこうしている内にHRが始まり、終わる。
席替えや、委員会は明日のHRに決めるらしい。
と、なると善は急げ。
急がば回れというが、90%オーバーで近道をした方が速いのは、実体験している。
俺が何故、バイトをそんなにしたいのか言う。
あまり聞きたくないのかもしれないが。
それはそれ。 これはこれ。
我慢していただきたい。
しかし元々ストーリー性が皆無の作品故に、大した事でも無いので、
読み飛ばして、スクロールしていただいても構わない。
ただし、出来るのなら読んでほしいという願望があるわけだ。
冒険家なんぞをやっている父がいる故に、母の印象が希薄になっているが、
別に離婚しているわけでも、不治の病を抱えてあるわけでも無い。
ただ、忘れ去られているだけだ。
…みんなに。
故に毎月、小遣いという名目で月に幾らかの現金を貰い受けていて、
中学の時は週一で帰りにファミレスに行く程度には、お金に困って無かったのだが、
高校に入学し、携帯電話を購入するにあたり、その使用料金は俺が払うことになったのだ。
俺は、別に部活で青春を満喫したかったわけでも無いし、
あ…いや、実を言うと、結構やりたかったりしたんだが・・・。
ともかく、大学に進学したり、趣味の読書にも金がいるわけだし、
特にバイトをするのに邪魔な理由は無かったりしたわけだ。
さて、そうと決まったら人生一直線。
タイムサービスの商品はモタモタしてたら売り切れる。
一度決めたら徹底的に叩き潰せ(何を!?)…というわけで、
バイトをしたいのじゃ。……じゃ?
いや、厳密にはバイトをしたい事にした。
という表現が適切…じゃないかもしれないが、近い気がする。
HR終了後、俺はしつこくメルアド(もはや、死語なのか?
今はアドレスだけでメルアドという意味になっているが、
それは(略))を聞いてくるやつ達(残念なことに大半が男子だった)を躱しつつ
(躱さないと、ぶつかって弾き飛ばされるため)校舎内を駆け抜けた。