―――
起きたら、目の前に斎藤と里居がいた。「チョコをくれ」などと言い出したから、

とりあえず斎藤を殴っておいた―――

「で、蘭。チョコをくれ。」

……いつも通りにドアを開けると、柳野がそんな事を言い出したきた。

「お前のせいで、この前の英語のテストのリスニングで

fasterpastaと聞き間違えただろ!

とりあえず八つ当たりをしておいた。

「蘭、母さんへのチョコは?

「冷蔵庫の中。じゃあ行ってくる」

母に挨拶をすると、俺は柳野を蹴り起こして学校へと向かった。

「で、そのサブバッグは?

柳野はいつものスポーツバッグ以外に、手提げ鞄を二つも持っていた。

「そりゃあ、アレだ。
俺にわんさかとチョコがくるだろ?
そしたら、コレ(スポーツバッグ)だけじゃ入りきらないからな。」

……確かに。柳野は男前だと言える。
「いや、正直微妙。」
変な行動などに目を瞑れば、基本的には良い奴だ。
「馬鹿で扱いやすいだけ」
ある程度はもてるだろう
「有り得ない」
……きっと。


………。


「蘭、チョコ。」

里居がいつの間にか隣に立っていた。
とりあえず、渡されたチョコを受け取る。

「ありがと……でも里居、心の中を読まないように」

ふむ、と里居は目を瞑る。


「善処する。」

いや、する気ないだろ!

「おい、里居!
俺の蘭に色……って、ごめんなさぁぁぁづっ」

何を言おうとしたのだろうか……柳野は里居の攻撃で屍になった。



―――
―――

 


昼休み、俺は柳野に頭を下げる状況に陥ってしまった。

「という訳で手提げ鞄を貸してくれ。」

「持ってけよ、このやぶぎゃぁぁっづづ」

「……蘭、アタシの以外は燃やせ。」

いやいやいやいや!

「燃やせ!

……いやいやいや。

だが、確かに一人では処理出来ない量である。

…ふむん。

「柳野、20個くらいあげようか?

「うっせぇ!あっちいぶぎゃぁぁっづづづづっ!

柳野がおとなしくなったようなので、柳野の鞄を拝借してチョコを入れる。
入れる。入れる。入れる。入れる。入れる。入れる。

入りきらないので、スポーツバッグも拝借する事にした。

「藍原〜、また来たぞ。」


クラスメイトの声に反応し、

既に3桁を越しているチョコの山にまた1つ、新たなチョコが加わった。



―――
帰り道―――



柳野も里居も俺と帰るのを拒否し、二人でそそくさと帰っていった為、

必然的に俺は一人で帰ることになる……筈だった。

現在、柳野と里居を尾行中な俺である。



―――
来るな。

何かが聞こえた気がした。

見ると、里居と柳野は彼等の家では無い方向へ、歩を進めている。

―――
来るな!

何かが聞こえる。

里居と柳野が交差点で別れた。
里居は右へ、柳野は左へ。



俺は、里居の方へ行く。



声は、大きくなる。

 


里居はある廃ビルへ入った。
―――
追う。

 


廃ビルの二階。里居はそこへ入る。



………。

 


頭痛がする、悪寒がする、吐気がして、呼吸が出来なくて、痛くて、苦しくて、

手をドアノブに差し出すだけの行為の筈が、手を動かす度に手が削れていく。

そもそも、何で俺はこんな事をしようとしているのか。

分からない。解らない。

そもそも、俺が俺でいる事も証明出来ない俺には解る訳無いだろうが黙れ。
中には里居だけしかいない。しかし、里居は誰だ?

俺はその苗字の人物を二人知っている、いや知らない。

アイツの記憶は俺に流出されない。接続していないのだから当然だ。

アイツとは?アイツなんて奴は知らない。知らない、知らない。

俺はドアノブをゆっくりと握った。
途端、頭痛が止まった。いや、声も消えた。
当然だ、全ては空耳だったんだ。



音を立てずにドアノブを回す。
中が見える程の隙間を開け、覗きこむ。



「………?」

驚愕の声は声にならなかった。



――――




―――
朝、起きたら目の前に里居がいた。

目がかなり危ない感じだったから、とりあえず飛び起きた。

変な体勢で寝ていたのか、右腕がメチャクチャ痛かった。



Body information connection completion
Mental information is being connected.
Soul information hasn't connected yet.

 

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