Sample〜Simple〜
小噺
≪Harmonies du soir≫
「はい、藍原です」
「もしもし、蘭だけど。何された?」
「…………さ、さぁ〜。お姉さん分からんな〜い」
「――何か、貰ったのか? それとも脅迫か?」
「アハハ――何でもないよ、うん」
「――何を貰ったんだ?」
「え? やだなーもう。アタシはただ、あの子が家で住みたいって言うから――」
「――で、何で母さんが出ていくんだよ?」
「……あのさ、蘭。今、アタシが何処にいるか知ってる?」
「エジプトだろ?」
「そ。だから、蓮と一緒なのさ♪」
「――はぁ、何で今まで行かなかったんだよ?」
「だって、お金が無いしさ。蘭はみーちゃんとくっつかないしさ」
「――余計な御世話だ」
「まあ、そーゆーコト」
「そっか、金を貰ったんだな」
「……ま、そーゆーコト」
「そっか。まあ、父さんにもよろしく言っといてくれ」
「ん。分かった―――じゃ、ね」
「ああ。どうせならそのまま戻ってくるな」
「―――蘭、親に向かってそんな言い方は―――」
「じゃ、さいなら。(ガチャリ)」
「ね、言った通りでしょ?」
「あぁ―――そうみたいだな」
何の因果か―――本気で、この人は俺の家に住むらしい。
「ま、迷惑はかけないからさ」
「だったら―――まず、階段を修復しろ!!」
戦闘で半壊した階段を指さして、俺は怒鳴った。